<超微細レーザー加工コラム第6弾>フィラメンテーションについて
コラム
2022.05.31
弊社では超短パルスレーザーのフィラメント形成を使用した加工をご提供させて頂いています。
レーザー波長に対して透明なガラスや結晶基板に対して以下の2つの加工があります。
- レーザースクライブ加工による切断加工
- レーザー内部改質+ポストエッチングによる加工
今回は、それらのベースとなるフィラメント形成について説明いたします。
フィラメント形成とは、フィラメント、すなわち光の伝搬方向に長い連続した焦点スポットが形成されるプロセスのことを指します。それは高強度なレーザー光に対して透明な媒質中で起こります。ガウシアン強度分布のビームではビームの中心部は強度が高いため、ある強度を越えると非線形光学効果である光カー(Kerr)効果により自己収束が起こります(①)。
一方、物質内の電子が励起されるとプラズマが生成し、パルスの中心部はプラズマによって発散され、伝播方向に進みます(②)。従って、連続したパルス照射のとき、①の自己収束と②のプラズマ中の発散を繰り返し、結果として連続したホットスポットが伝播軸に沿って出現します。これがフィラメントと呼ばれています。
(図1)
図1 フィラメント形成のイメージ
次に、フィラメント形成においてレーザーパルスのバーストモードの使用は加工に大きく影響します。バーストモードとは、シングルパルスモードの基本繰返し周波数とは別に1パルス中に更に高繰り返しでパルス列を含む発振モードです。それによって透明材料の厚み方向に長いフィラメントが形成されやすくなります。(弊社では最大2mm程度)
この長いフィラメント形成は高繰り返し周波数のバースト列による熱蓄積の効果によるもので、ガラスの穴あけ加工に関する文献[1]において、バーストモード時にフィラメントの発光の減衰時間が長くなるという観察結果と併せて説明されています。穴加工においてはバーストモードでは、シングルパルスモード時より加工レートが上がり、まっすぐで高アスペクトな穴が形成されやすくなります。
弊社では、バーストモードでのフィラメントを利用して透明材料、特にガラスの内部改質を行い、切断や、エッチングを併用した加工(穴あけ、トリミング)を行っています。
[関連する加工事例]
➤ ガラス切断加工
➤ ガラス割断加工
➤ 薄板ガラス切断
➤ ガラス貫通穴加工
➤ ガラスくり抜き加工
[参考文献]
1.D. Esser, et al., Opt. Express 19(25), 25632–25642 (2011).